巣立ちの日

7月だったろうか。
キジバトが小枝をわが家のひさしの上に運んできた。
そこに巣を作られてはかなわないので、追っ払わざるをえなかった。
どうやらあきらめたかな、と思っていると、また小枝をくわえてどこかに行き来し始めた。
わが家のとねりこの小枝をとっていくのは一向にかまわないので、他に巣を作り始めたかなと思っていた。

7月だったろうか、キジバトが庭のとねりこの木に居続け始めたのに気付いた。
「別宅を設けたのかな。」
「かみさんに追い出されたのかな」
などと、妻と冗談を言っていた。
どうやら、つがいのキジバトが交互に来ているようだった。

8月になってからだろうか、キジバトがいなくなった。
「本宅に戻っていったのかな」と噂していると、どうも様子がおかしいので、2階のベランダから観察してみた。
すると何やら毛むくじゃらのものが動いている。
そこで初めて親バトが交代で卵を温めていたのに気づいた。
二羽の雛が誕生したのだった。

親バトはせっせと餌を運び、雛がくちばしをのばしているのが見えた。
こうなると、自分の孫のようで、無事に巣立ってくれることを祈るのみ。
少しずつ雛は大きくなっていった。

ある朝、見上げると巣はもぬけの殻である。
下の枝が折れていた。
「これは落ちてしまったのか」
「それとも猫にやられてしまったのか」
と心配になった。
あちこち探すと、横の通路に幼いキジバトがうろうろしているのを見つけた。
ほっとするが、もう一羽が見当たらない。
猫に見つからないようにと、心配した。
親らしいキジバトが探しに来ていたらしかったが、子バトは歩いて離れた場所に来ていたので、すぐには会えなかったようだ。
そのうち子バトもいなくなったので、無事に巣立って行ってくれたようだ。

それからしばらくの間は、カラの巣を見上げては、ため息をついていた。
最近、時折、若い二羽のキジバトが向かいの電線に止まってこちらを見ているようだ。
それがこの巣を巣立っていったキジバトか見分けがつかないが、
「お礼を言いに来ているんじゃない」と妻と話している。

 

 

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