ボゴタでは、鈍い頭痛がした。
標高2600mの土地である。
それを心得て、ゆっくりと動くようにした。
モデラート・カンタービレ、ゆっくりと・歌うように。
音楽用語だが、昔読んだ小説の題名である。
歌うようにとまではいかないが、ゆっくりと街を歩いた。
museumに入った。(博物館に近い)
やっているのかいないのか、他に客はなかった。
女性の係員が案内してくれた。
私が部屋に入る時に電灯をつけ、出る時に消していた。
文化的な都市たるものmuseumがないとおかしい。
そんな配慮から、とりあえず作ったような印象を受けた。
街の通りでは、女性がポットを乗せた台車を引きながら、お茶を売っていた。
マテ茶だろうか、安いが、飲んでみると控えめな甘さで、とてもおいしかった。
大聖堂前の広場で、座ってぼんやり周りを眺めていた。
顔に傷跡のある少女と、ちんぴら達がなにやら話していた。
茶店で休んでいると、若い兵士たちが入ってきた。
休憩しているらしい。
このあたりでは、銃を見るのが珍しくない。
大きなビルに入ると、背広姿の警備員が銃を構えて警戒していた。
夕方小さな食堂に入ると、他に客はいなかった。
どう注文しようかと思っていると、おかみさんが声をかけてくれた。
「カルネ(肉料理)?」
カルネというと、調理の女性に指示していた。
肉野菜炒めのようで、とてもおいしかった。
教会の裏に公園があった。
たそがれ時で、夕焼けが公園の空気をまぶしく照らしていた。
子供たちはサッカーに興じていたが、そのうち散っていった。
夕食に家に帰るのだろう。
わたしはベンチに掛け、物思いにふけっていた。
明日はこの地を離れなければならない。